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「食の未来」を考える Vol.5

〜AFP代表・加藤×乾物エバンジェリスト・サカイ優佳子〜

オルタナフード, コラム, 駝鳥2015/05/13

AFP代表・加藤×乾物エバンジェリスト・サカイ優佳子

AFPでは「食の未来」を考えるため、生産者・飲食店・消費者のみなさんと意見交換しています。今回お話をうかがったのは、乾物エバンジェリストとして活躍するサカイ優佳子さん。乾物の魅力と、サカイさんの考える「食の未来」についてお話しました。


 

「もう乾物というものが、ほとんど人の頭の中に浮かばないことがショックでした」

 

加藤:サカイさんの乾物のお話はたいへん興味深く、いつも聞かせてもらっています。何がきっかけで、乾物に注目したんですか?

サカイさん:乾物って面白いなと思っていた矢先に、3.11があったんです。私の住んでいた地域は計画停電が実施されたのですが、生鮮食品は売り切れているにもかかわらず、乾物はそのままっていう状況を目にしたんです。冷蔵庫がなければ乾物を使えばいい、と思いがいたらないか、使い方がわからないか。もう乾物というものが、ほとんど人の頭の中に浮かばないことがショックでした。

加藤:やっぱり乾物というと、意外と縁遠い気がしますよね。

サカイさん:たとえば乾しいたけや高野豆腐を思い浮かべる人も多いと思うのですが、私はそういった伝統的なものだけではなく、もう少し広く乾物をとらえています。食べ物から水分を抜き出して、それによって常温で長期保存できるようになったもの、と定義しています。そう考えると想像以上に、私たちの周囲には乾物が存在している。常温、長期保存が可能、軽いということは、乾物のとても優れたところだと考えています。

加藤:乾物の定義の見直しということから、オルタナフードについての考え方もいろいろと学んでいます。実際にどうやって広めているんですか?

サカイさん:料理教室やイベントなどで、とにかく実際に料理して食べてもらうことが大事と考えています。

乾物を習いたいという人の中には30歳前後の方も少なくないんです。男性も意外にいます。「乾物ってズボラな人間にぴったりですね!」なんていう感想をいただいたこともあります。

乾物の多くは、包丁いらず。皮をむいたり切ったりする必要がないものが多いんです。乾物を使う人が少なくなってきているのは、3つの負の先入観による、と私は考えているんです。それは「しょうゆ味ばかり」「地味」「面倒くさそう」。それなので最後の「面倒くさそう」という先入観を取り除きたいと「どれくらいの時間で戻るでしょうか?」と、たくさんの乾物を一本の時間軸の上に配置してもらうといったこともしています。並べてみるとビジュアルで実感できると思うのですが、実は8割以上の乾物が20分以内で戻るんですよ。

ということは仕事から帰って、乾物を水に入れてシャワーを浴びに行ったら戻っている。生の野菜を使おうと思えば、皮をむいたり、刻んだりして、付きっきりで作業をしないといけないし、生ゴミも出ますよね。

 

「知ってもらう工夫は必要ですよね」

 

加藤:実際に体感してもらうというのは、やっぱり大切ですよね。

ダチョウ肉でも他のもので例えたり、実際に試してもらったりしてます。知ってもらう工夫は必要ですよね。

サカイさん:そうなんです。でも普段から「乾物とは?」と意識している人は少ないでしょうが(笑)、改めて考えてみると毎日なにかしら口にしていることに気づくかもしれません。ナッツだってドライフルーツだって乾物ですしね。

若い人たちにも乾物を使って料理を作ってもらいたいと思うので、著書ではあえて伝統的な料理には触れずに、世界各地の料理法を取り入れています。たとえばギリシャ風の煮込みとか。そうそう、自分でいうのもなんですが、乾椎茸を赤ワインで煮る料理「ドンコ・オー・ヴァン」は絶品。フランスの伝統料理コック・オー・ヴァン(鷄肉の赤ワイン煮込み)にヒントを得たのですが、主役は赤ワインと鷄肉の旨味をたっぷり吸った乾椎茸!

世界に日本発の乾物を広めていくサカイさん。9月にはミラノで現地のアーティストと組んで、乾物を使ったイベントを開催予定。
世界に日本発の乾物を広めていくサカイさん。9月にはミラノで現地のアーティストと組んで、乾物を使ったイベントを開催予定。

 

「目的はよりよい未来に向けて、何ができるかということ。そこに手段としての料理がある」

 

加藤:サカイさんは乾物に限らず、さまざまな活動を続けていますが、何がモチベーションになっているんですか?

サカイさん:この社会にはたくさんの大きな問題があります。たとえば砂漠化といったことも、その一つ。気にしていないわけではないと思うんです、みんな。でもあまりに問題が大きいと「自分にやれることなんてあるのかな」と感じて、思考停止してしまうことも少なくはないのでしょうか。

たとえば、田んぼを残すために何ができるかとなったら、お米を食べることだったり、あとは飼料米で作られた家畜を食べたり、米粉を食べたり。私たちの日常生活の中でのちょっとした行動の変化が、未来の社会を作っていくと思うのです。そんなに大変なことはしなくても世界を変えることはできるんだと思うんですよね。形が悪かったり、大量にできすぎてしまった食べ物でも、乾物にすれば無駄にせず食べることができます。常温で保管できるので家庭でも売り場でも、輸送の時にも冷蔵庫はいらないし、軽いから輸送の際のCO2削減にも繋がります。そんな乾物を作って食べることは、未来の社会でも食べ続けていくために必要なことと考えています。

最近気づいたことがあるんです。私の目的は、おいしい料理を作ること自体ではない、って。料理を作ることは、私にとって技術であり、手段なんだって。目的はより良い未来に向けて人が行動を起こせるような仕組みを作っていくこと。そこに手段としての料理があると、最近とらえ直しているんです。

加藤:自分も似たような考え方があって、今は毎月1回イベントを開いているんですけど、それって1カ月、30日の内の1日の生活を変えるということだと思うんです。30分の1なわけですけど、それだけで良いから食べるものを変えてみる。それを毎月続ければ、その人の3%の世界を変えていけると思っているんです。

それが月に1回が2回、3回になれば少しずつ広がっていくと思うんです。それがAFPでやっている、小さな一歩なんですよ。これからも、それは続けたいですね。

今日は本当に楽しい話をありがとうございました。また参考にさせてください。


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